【第4話 再生】
–再生ボタンがあれば
何に生まれ変わりたい?
心残りがあるから
懸命に生きなければと
考えてしまうのかもね–
それから
時間が流れ
会社を辞めた
そして
パン屋を再開した
最初のうちは
うまくいっていた
よくある話だ
逃げるように始めた仕事を
評価してくれる人は多くない
採算が合わないパンは作りたくない
特にカレーの味を再現出来ずに
カレーパン を作るのを辞めた
カレー屋でもないのに
カレーを作ることが嫌になった
そして無駄なことはしたくない
そこから逃げるようになった
作るものが減れば
手間も減る
生きていくギリギリの売上にはなった
そうやって
必死に生きることを辞めた
あれ以来
彼女が店を訪れることは無くなった
-あの日の僕は
何もかもから逃げ出していたんだ
逃亡者のように-