d-revolutions
contact

ブログBLOG

短編ドラマ 人生とカレーパン 第二話

2020.8.28

【第二話 遠い景色】

-人生において

大切なことに気づけるタイミングは

いつも遠回りしてしまう

そんな気がする-

 

大学4年の夏

将来の夢や就職先もなかなか決まらない

そんな自分に嫌気が差す

景色にすれば

見落としてしまいそうな

そんな場所に小さなパン屋があった

そこには優しく見守ってくれる

おばさんの姿があった

何もかもが嫌になって

明日が来ることから

逃げ出そうとしたあの日

普段なら通り過ぎていた

パン屋の前で立ち止まる

そこからは

バターの優しい香りと

スパイスの効いたカレーの匂いがした

徐に陳列してあるパンを眺めていると

カレーパン に目が止まった

買ったのは

そのカレーパン ひとつ

公園のベンチに座り

カレーパン を食べる

優しい味がした

そして香りとスパイスに

何故だか涙が止まらない

だけど

あぁ

生きていていいんだ

人生のスイも甘いもここにあるんだ

明日を楽しみに眠ることが出来た

しっかりと眠れたのは

いつ以来だろう?

-ねぇ

それはあまりにも簡単なこと

優しさの中に愛が詰まっていて

それを

ただ教えてもらったから-